生きる(仮)

DIE FROM LOVE

好きな人間がスーパースター

そういえば東京ヤクルトスワローズさん交流戦最高勝率おめでとうございました あまりにもいまさらに思えるな プロ野球情勢は毎日めまぐるしく変わりゆくので
いや~最初2カードあたり「強いな……強いけどまさかな……」と思っていたのも遠い昔のことのよう そのまさかだったんだよ
ほんとうに突然強くなったので正直最後まで困惑は隠しきれなかったが 贔屓球団が強くなってうれしくないわけがない
素直にめでたいし向こう5年はこのことをおかずに白米を食べられるというくらいうまみがある

それでわたしが怪我についてブログを書いた翌日にしれっとスタメン復帰する推し 早いわ 小川監督の「大丈夫って言うから」とかいうコメントを読んで苦笑いの表情が目に浮かぶようだった
マルチヒットでもこっちはまったく素直に祝えなかった ただこっちはこっちでうれしくないわけがない うれしいようれしいに決まってんじゃん いちばん好きな野球選手が野球をやってくれてんだぞ

そして復帰したその日に決まる最高勝率
別に打点を上げたわけでもなし 偶然と言えば偶然かもしれんが やっぱり山田さんがいてこそ……なんだな……とひとり納得してしまった
東京ヤクルトスワローズは山田さんのチームではない でも山田さんの存在はなにか大きなものをもたらしているような気がする
ということを改めて考えた オタクの贔屓目かなとも



きょうは神宮へ
知っていた記録が迫っていること だからと言って「だから」で行ったわけではく 2ヶ月前からこの試合は見に行こうと思ってチケットを取っていた
そういうわけなのでまあどっちでもいいかな 見られたらラッキーかなくらいに考えていた
いやウソ 正直現地で見届けたくて仕方なかった なんでウソつくの?

まあご存知のとおり7-15とかいうスチャラカなスコアで負けましたが
7回表の時点では1-13と さらに惨状といった感じで 青木さんの頭部死球もありまじで救いがねえ帰りてえと何度も思った
そんな試合で救われることがあるとすれば山田さんのホームランだった そして山田さんならきっと打ってくれるという希望的観測があったから帰らなかった

帰らなくてよかった~!!!!!



両軍合わせて22点が入った乱打戦においてなお この人の打球はとびぬけて鮮烈だった となりの人が声に出して「目の覚めるような……」と言っていていやその形容詞を日常会話で使う人初めて見たわと思ったがまさにそのとおりだとも思った

わたしはごく当たり前のように泣いていた
いちばん大好きな野球選手の記念すべき瞬間を見届けられたこれほどよろこばしいことはない
夢みたいな奇跡みたいな景色を見せてくれて いっしょに見られて 好きになってほんとうによかったよ

こんな試合で……とは思わなかった むしろこんな試合だからこそだ
2年前の交流戦なんかそれの最たるものだったが 大差の試合に限ってホームランを打ちがちな山田さん そんなときに打っても意味ないだろと言われているところも目にしたことがある
ただ大差で負けている試合で山田さんのホームランがどれだけ大きな意味を持つかきょう現地で見ていてはっきりわかった
「もう勝敗はいいから山田に打ってもらいたい」「山田が打ったらもう満足だよ」「山田が打ったら勝ち」
山田さんの打席の直前 まわりの観客はみな口々にそう言っていたし 実際打ったら「実質勝ちだな~!」とニコニコ笑っている人も多かった メモリアルアーチだから特にだろうが

「自分を見に来てくれる人もいる。これが自分の仕事」
と去年の山田さんは言っていた
山田さんがホームランを打つことで救われる命が ここ神宮球場にはこんなにもたくさんある それは150本の積み重ねのたまものだ
まだ25歳 たぶんみんなが思っている以上にとんでもないよ彼は
ほんとうにおめでとうそしてありがとう Tシャツ買うね……



150本のうち自分が現地で見た4本のことを考える
散歩マシーンと化していた山田さんがあまりにも心配でスーツ姿で乗り込んだ4月6日 ライナー性の今季第1号ホームランと 逆方向だった5月26日 あの日で連敗が止まったんだった
あとは同じく心配が極まり仕事終わりに弾丸で訪れた6月26日 山田さんのホームランがなくとも勝てていた試合ではあったが 次の回で守備についた彼への歓声の大きさが半端ではなかった みんな山田さんのことを待っていたんだなと思った
そしてきょうの1本

逆に言うと生で見られなかったホームランが145本もあるわけで そこそこしょっちゅう現地へ行くようになったいまでさえいちいち 現地で見たかった~!と思うことはしないが
喉から手が出るくらいこれだけは現地で見たかったと思うものももちろんある それが149本目だった
自宅で音楽番組のかたわら見ていた試合で まさかの同点で回ってきた9回裏の打席1アウト1塁2塁 いつもなら四球か悪くて三振か でももしかしたらきょうは……と緊張の面持ちでいたところ飛び出た1本
スタンドに入った瞬間まじで気が狂ってしまった
どれくらい気が狂ったかというと大号泣しながら祈りのように抱えていたユニフォーム型クッションを床にバンバン叩きつけるくらい(怖……)

初めてのサヨナラヒットがホームランでそれもこんな劇的な試合で
相変わらずやることが派手……と思っていたらヒーローインタビューの冒頭 アナウンサーさんが発したひとこと
東京ヤクルトスワローズが生んだスーパースター!」
ああ結局すべてこの言葉に集約されるんだなと思った ちょっとあまりにも陳腐かもしれないしアホらしいかもしれないが
チームに大きな影響を与える存在のように見えてしまうのも みんなが彼に希望を託し 彼を待って 彼の活躍に心躍らせるのも
山田さんが「スーパースター」だからだと

「てっちゃんはほんとうに山田哲人なんだね」というのはそのサヨナラの際に見かけたツイートのひとつ なにを言っているのかわからないと思うがなんとなくわかってしまった
ふだんの山田さんは実に素朴で等身大でえらぶらず 屈託なくニコニコと笑うので忘れがちだが 彼は球団最年少で通算150本塁打を達成させた 日本球界の若きレジェンドの山田哲人にほかならないんだよな
こういう派手なことをやってのけたとき 神宮で段違いのボリュームの応援歌を聴いたとき そのことを実感させられる
わたしの好きな人間がスーパースターだ
この年にもなって他人の愛で自分の愛を裏付けするなんてダサいにもほどがあるが 誇らしいものは誇らしい自慢の推しだ
ほらねまただれかきみのうわさしている みんなきみをすきなんだ……

とはいえ山田哲人とは違うふだんの山田さんを見ていると
スーパースターなんかじゃない!ごくふつうの青年なんだからあまり背負わせすぎないで!と言いたくなるときもある だからこそ試合中めったに感情を見せない山田さんがダイヤモンドを回りながら慣れない様子でガッツポーズを見せたこと あのお立ち台で
「野球やっててよかった」
と言ってくれたことがほんとうにほんとうにうれしかった ぶっちゃけサヨナラホームランそれ自体よりうれしかったかもしれん
かつてインタビューで「野球人生の95%はつらい」と言っていた山田さん こっちまでつらくなってしまった 彼にそんなことを言わせてしまう野球はなんなんだという気持ちにすらなったが
嫌でも野球と向き合いながら生きていかなければならない彼が「野球やっててよかった」と思える瞬間が少しでも多く来るようにと 彼の野球人生に楽しいが1%ずつでも増えるようにと
祈らずにはいられねえ

それで本人が「完治した」と強調する怪我ですがいや治っていないの知っているからね その左腕のサポーターはなんだ お父さんに見せてみなさい だれがお父さんやねん
怪我が治らなくても試合に出たり 自分が大記録を達成しても試合は負けているからって 花束をもらって笑顔ひとつ見せなかったり それが山田さんなんだろうとも思うが
もうちょっと楽にしませんか 自分で自分の首を絞めなくていいんだからね