生きる(仮)

DIE FROM LOVE

メロウェ~ロス・そして「未来の人へ」と「あなたがいるなら」

いまさらながらコーネリアスの国内ツアー「Mellow Waves Tour 2017」12+1公演お疲れさまでございました
わたしは香川・大阪・東京・広島をバスで行ったり来たりしながら2週間を過ごし その後ほぼ""無""の状態でまた2週間を過ごした
Fantasmaのリマスター盤発売をきっかけにコーネリアスを好きになって7年 新譜の発売とそれに伴うライブツアーを待って待って待ち続け 結果として期待以上のものが聴けて見られた 何公演見てもまったく飽きなかったし毎回毎回初見のような感動を覚えていた わたしはほんとうに幸せなファンだと思うけれど



わかりやすく燃え尽き症候群である

ただ「好きなミュージシャンです!」と言うのとは違う特別さを小山田さんにはずっと感じていて その結果かなり振り回されまくった青春に一旦ケリをつけるためのツアーにしようと自分ではそう考えていたのだけれど
ほんとうにケリをつけたいならライブなど見ないことだな……と思った 小山田さんの音楽とギターと歌がふつうに死ぬほど好きだからな!?だからまあ最初から本気でケリをつけようなんて思っていなかったんだよなきっと
完全にぶり返してしまったのにわたしの青春の中軸をなしていた「新譜乞食」「ツアー乞食」という習慣は失われてしまっているこの状況 どうすればいいんだと思いつつ日々過去の文献や音源を読み直し聴き直している

加えて 4公演も参戦したばかりにツアー中「数日バイトやゼミをがんばれば小山田に会える」という状況ができあがっていたのがいけなかった このさき小山田さんを見る予定がないという現実がつらすぎる
NHKの公開収録も外れてしまった(おのれサンシャイナーめ 俺のぶんまでみら僕を楽しんでくれよ)いま わりと本気でアメリカ行きの航空便とアメリカの宿を探し始めてしまっている……いやこれは卒業旅行だから



ツアーの感想も書くつもりでいるのにぜんぜん筆が進まないんだよね 書きたいことやまほどあるんだけどな 大阪でアンプが壊れたこととか……東京で小山田さんが歌いながらむせたこととか……(珍プレー集?)
そんななかでもこの曲のことだけはぜったいぜったいちゃんと書き残しておかないとなと思った2曲だけいまのうちにピックアップしておきます
それが2曲とも新曲という事実がまずよろこばしいよな


「未来の人へ」
http://j-lyric.net/artist/a04c843/l0410bc.html

アルバムを聴いたときも「この作品のヤバさの大部分はこの曲が担っている!」と大騒ぎしたものだけれど ライブにて映像つきで聴いたところ騒ぐ気力すら根こそぎ持っていかれてしまった
いや……あの映像はほんとうに素晴らしいな だれもいない部屋……モノだけが散りばめられた部屋のなかを猫が歩き回るという 歌詞に寄り添いつつも過剰に説明しすぎないストーリーで 絵面も至極シンプル モノクロのなかにフッと現れる花の黄色が目に鮮やかで印象的だった
深く考えずに見て聴けば美しい映像に美しい音楽 超感動で最高~!!というだけで済むんだろうが
その部屋に散りばめられたモノの数々が……サングラスにギター あとコンバースに過去作のレコードと ことごとくコーネリアスを象徴するモノたちだったことを考えるとそうとう情緒に……クる
そうなると部屋をさまよう猫にも意味が感じられてくるんだよね 小山田さんは生粋の猫好きでいらっしゃるから……

深く考えるとあれは「コーネリアスがいなくなった世界」
メチャクチャ不吉なことを言うようだけれど いま目の前で歌っている人間が死んだあとの空間を予見するかのような映像がバックで流れてんだよ!?尋常じゃないでしょ 観客だってリアリティ感じて切ないというか苦しくなってくるよね
そのためツアーが終わっても延々とこの曲を聴いては深読みしてしまいたびたび胸が痛い 映像がつく前からそういう曲だったとわかってはいても まさかあそこまで生々しい映像になるとは思っていなかったから……
そもそも全体的に死の匂いが強めのMellow Wavesとかいう作品 いまの中年も深まってきた(本人談)小山田さんにここまで切り込まれるとまじでちょっと怖いんだよな
作詞は坂本さんだけど……いやでも本人作詞のいつか / どこかなんかもやたら不穏だし……しかしその儚さが美しくて最高 ジレンマだな


「あなたがいるなら」


初聴時からしばらくは「この曲がコーネリアスの新曲である」ということに気を取られてしまい「まさか小山田さんがこんな曲を歌ってくれるなんて……」とそこにばかり感動していたのだけれど
ツアーを経てようやく冷静に聴けるようになって いやコーネリアスの新曲であるということを抜きにしてもとんでもない曲だなこれと思うようになってきた
ただそのとんでもなさはうまく説明できないんだよな 冷静とは……

アルバム発売にあたって特設サイトにアップされたインタビューのなかで

歌って定型になりがちじゃない? 今まで聴いたことのないような曲ですごくいい、みたいな曲ってなかなかできない。でもそういうのをやってみたいじゃない? 歌でそういう表現ができればなあ、と思ったの。不安定な感じで逆にぐっとくるっていうか。ほんとに伝えたかったり言いたかったする時って、もつれたりひっかかったりするじゃない?(中略)そんな滑らかだったりしないっていうか。その感じをメロディとかリズムで表現できないかな、みたいな。


あなたがいるならについて小山田さんがそう言っていた こういうところは確かにとんでもないよね そんなことまで意識していたんだ!?という……
この発言を踏まえて聴くと 作詞を担当しなかった小山田さんがそれでも曲を構成する要素を通して伝えたかったことがひしと感じられる この死ぬほど複雑なリズムももつれやひっかかりを表現するためのひとつの手段だったんだな~とか……いやそうでなくともコーネリの曲はだいたい複雑じゃんというのは置いておいて
自分ではかつて「シンプルなラブソングだけどただのラブソングではない」と言い表した覚えがあるけれど その言語センス超ナイスじゃん!と無駄に自画自賛したくなるほどまさにそういった感じだ
しっかり考えられて作られていることがなんともうれしい 貴重な小山田さんのラブソングがただのラブソングじゃなくてよかったしコーネリアスの11年ぶりの新曲があなたがいるならでよかった

なによりうれしかったのはライブでこの曲を歌う小山田さんが紛れもなくボーカリストだったこと
フィルター抜きで……この曲のときは特別歌に集中している様子だったよね!?まあ集中して歌わないと間違えるからかもしれんが
小山田さんは「平井堅さんみたいに歌のうまい人に歌ってもらいたい曲」と言うしそれはそれで聴いてみたいけれど いやこの曲を世界でいちばんうまく歌えるのは もつれやひっかかりをいちばんうまく表現できるのは小山田さんにほかならないよ……と伝えたい気持ちでいっぱいだ
腹式呼吸のふの字もビブラートのビの字もないし技術的にはきっとさっぱり しかし小山田さんの歌声はほんとうにいろんなものをはらんでいて美しいと
生で聴いて改めて思わされた たくさん歌ってくれて実にありがたいな